矯正の相談で「健康な歯の抜歯が必要って言われたんだけど…」「なんで歯並びを治すのに抜歯が必要なの?」「1件目の医院では、抜歯った言われたけど、2件目では抜歯は必要ない!って言われたんだけど、どっちがホントなの??」なんて思ったことはありませんか??
本記事では、「矯正治療と抜歯」についてお話します。
・なぜ歯並びを治すのに抜歯が必要か
・「どんな歯並びでも非抜歯矯正」って?
・医院によって抜歯と非抜歯が違うのはなぜ?
・非抜歯矯正と抜歯矯正のメリット、デメリット
・抜歯しても将来的に大丈夫か
矯正治療に抜歯が必要な理由
なぜ矯正治療には、抜歯が必要な場合があるのでしょうか?
矯正治療で抜歯を行う目的は、「スペースを作る」ためです。例えば、デコボコになっている歯を綺麗に並べるとき、出っ歯で前歯を下げてきたいときなど、スペースがなければ歯を動かすことはできません。ただ、成人の方であれば歯と歯の間にスペースがあることは少ないです(隙っ歯は除く)。
そこで、スペースを作るための方法の1つが「抜歯」となります。
ポイント
矯正治療での「抜歯」はスペースを作るため
矯正治療でスペースを作る方法
では、スペースを作るためには必ず抜歯が必要なのでしょうか??
そんなことはなく、スペースを作る方法もいくつかあります。
・抜歯
・側方拡大(歯列の横幅を広げる)
・遠心移動(奥歯から後ろに動かす)
・前方拡大(前歯を前に出す)
・PR(1本1本の歯を少しずつ削る)
まず、歯を前後左右に動かせばスペースを作ることが可能です。ただし、矯正治療はアゴの骨の中で歯を動かしていきます。大人の場合アゴの骨の成長はありませんので、動かせる量には限界があります。その量も、個人差はありますが、それぞれ数㎜程度が限界かと思います。また、1本1本の歯を削るIPRも当然限界があります。削り過ぎたら、歯がしみたり、痛みがでてしまいます。これも限界量としては1本につき0.数㎜程度です。
そのため、動かしたい位置に動かすために必要なスペースの量が、教科書的には4㎜以上、最近でも4~8㎜以上あると抜歯を検討することになります。
ちなみに、日本人の犬歯(糸切り歯)は8㎜程度ありますので、八重歯などがあると抜歯の可能性が高いです。
その結果、現在でも大人で矯正治療を希望する患者さんの40~70%程度は抜歯と判断されます。(医院によります)
ポイント
大人の矯正治療では、半分以上で抜歯になる
無理に非抜歯で治すとどうなるの?
日本では、10~20年くらい前に「非抜歯矯正」というのが非常に流行りました。「非抜歯矯正」そのものは問題ないのですが、当時(もしかしたら現在でも?)流行っていたのは、「どんな歯並びでも非抜歯矯正」というものです。
「どんな歯並びでも抜歯は必要ありません!」や「矯正治療で健康な歯を抜歯するなんて悪だ!」などの極端な言葉が並びました。
もちろん矯正医も可能であれば抜歯などしたくはありません。しかし、スペースがたくさん必要な場合、基本的に抜歯は避けられません。
それでは、「どんな歯並びでも非抜歯矯正」とはどうやるのでしょうか?
1つ目は、単純に限界以上に歯を前後左右に動かしたり、IPR(歯を削ること)を行うことです。当然限界以上ですので、歯や歯周組織(歯のまわりの歯茎や骨など)にダメージを与える可能性が高いです。
2つ目は、矯正治療のゴールを甘く設定することです。上でも書いた通り、矯正治療では「動かしたい位置に歯を動かすため」にスペースが必要です。この「動かしたい位置=矯正治療のゴール」の設定を甘くしてしまえば、必要なスペース量は少なくて済みます。
どうでしょう?「どんな歯並びでも非抜歯で治します」ことには、大きなリスクがあると思いませんか?
実際、僕も他の医院や海外で非抜歯で矯正治療を行ったが治療結果に満足できなく、再治療を行ったケースが何度もあります。
無理な非抜歯矯正でよく起こることとしては、
・矯正前より口元が出てきた
・前歯で噛めなくなった
・どこで噛んでいいかわからなくなった
・出っ歯が治ってない気がする
などが多いです。
これを避けるためには、担当医に出来るだけ詳細な希望のゴールを伝えて、担当医に伝えられるといいと思います。
ポイント
「どんな歯並びでも非抜歯矯正」に飛びつくのは危険
抜歯と非抜歯、医院によって違うのはなぜ??
上でも解説しましたが、抜歯をするのは「治療のゴール」を達成するために必要なスペースをつくるためです。
この「治療のゴール」の設定に関しては、経験豊富な矯正医の間でも判断がわかれる場合があります。というか多いです。
個人的なイメージですが、
矯正医のほとんどが抜歯が必要とするケースが30~40%
矯正医のほとんどが非抜歯だとするケースが20~30%
残りの30~50%程度は、矯正医によって抜歯と非抜歯の判断が分かれます。
なぜこんなにも「治療のゴール」が矯正医によって違うかは、矯正治療のゴールに絶対のルールが存在しないからです。というか、成功のゴールにある程度の幅が存在する感じです。つまり、30~50%は「抜歯」と「非抜歯」のボーダーラインにあるケースということです。
歯並びや噛み合わせに関しては、「理想的なゴール」の指針があるのですが、矯正治療の前後で変わる横顔や口元など「見た目」の理想は患者さんによって大きく異なります。
例えば、「出っ歯が気になるので、なるべく口元を下げたい」や「口元なんて気にならないから、なるべく抜歯はしたくない」など色々です。
そのため、ご自身の希望は何でも矯正医に相談した方が、希望通りの矯正治療が受けられます。また、もう一つ大事なことは1件の医院だけでなく、最低2~3件の医院で相談をすると自分に合った矯正医が探せるのではないかと思います。
ポイント
矯正相談は、最低2~3件の医院で相談した方が良い
抜歯矯正と非抜歯矯正のメリット、デメリット
ボーダーラインのケースの場合、矯正医は主に患者さんと相談しながら抜歯をするか非抜歯で治療するかを決定します。
そこで、抜歯矯正と非抜歯矯正の大まかなメリット、デメリットを簡単に解説します。
抜歯矯正のメリット
・比較的大きく歯を移動させることができるため、治療の自由度があがる
・口元など歯並び、かみ合わせ以外のこともある程度変えることができる
抜歯矯正のデメリット
・歯を動かす量が増えるため、治療期間が長くなる
・健康な永久歯を抜歯する必要がある
非抜歯矯正のメリット
・比較的、治療期間が短くてすむ
・永久歯を抜歯しないですむ
非抜歯矯正のデメリット
・大きな歯の移動は出来ないため、歯並び、かみ合わせ以外は治せない
・困難なケースには対応できないこともある
非常に簡単にですが、一般的に上記のような特徴があります。
このあたりを踏まえて、矯正医と相談してください。
ポイント
抜歯矯正の方が治療の自由度はあがるが治療期間は長くなる
大事な歯を抜歯して、将来的に影響はないの?
矯正治療で抜歯が行われ始めたのは、今から80年以上前になります。その後、色々な研究や発表が行われていますが、抜歯をしたことによって、将来的に他の歯や歯並びがおかしくなるといった信頼できる報告はありません。
抜歯矯正を選択したとしても、矯正治療がしっかりしていれば、抜歯が原因で何らかのトラブルが起きるとは考えにくいです。
しかし、抜歯した歯は二度と戻りません。もし抜歯をしないでも治せる場合は、必要以上に怖がることはありませんが、矯正医とよく相談をしてメリット、デメリットをよく検討してから決定してください。